Next Commons Lab 林篤志氏が語る「現代に必要な起業家的精神」と「地方」に注目する理由。

自ら選択して、自ら作っていく

これまでお話ししてきたような変化の中で、重要になってくるのが「起業家的精神」です。

スタートアップのファウンダーを指したり、何かの事業を開業したりした人を指すのではなく、「自ら選択して、自ら作っていく」行動力がその本質です。

 

これまでの時代では、何か困ったことがあれば国家が助けてくれる枠組みとしてワークしていました。でも、もはやその時代は終わりました。昨年話題になった、「老後のために年金とは別に2000万円は用意してください」騒動はその最たる例ですよね(笑)。

このような公的なサービスは、戦後にできたものばかりです。それまでは自分たちが管理できる範囲で、自分たちで運営していくのが当たり前でした。その点、芸術家でありながら、教育や社会変革にまで影響を与えたヨーゼフ・ボイスが示した、「社会彫刻」と「人間は誰でもアーティストである」という考え方。みんなが社会の作り手になっていく必要性が、一周まわって現代に求められているようになっていると言えます。

本で言うと、『就職しないで生きるには』は1980年代に刊行された、新たなワークスタイルを探しまわった体験談として読んでみてほしいです。やりたいことを見つけたらどんどん取り組んでいく筆者の姿勢が特徴的で、これからの行動に活かせる考え方もあると思います。

 

また、「自ら選択して、自ら作っていく」ことに関連して、私が旧土佐山村で「土佐山アカデミー」というプロジェクトをしていた中で聞いた、人口約1000人の村ならではのエピソードをご紹介します。

この村では、「行政」という存在がある前から「自治」が行われてきました。例えば、村に水を供給する水路がなかったため、パイプで引っ張って継続的に供給されるようにしました。もちろん管理業者がいるわけでもないので、当番制で管理します。

でもある日、草刈りのときに間違えてパイプを切ってしまって村全体で水が使えなくなる。そしたら「誰々さんがパイプ切っちゃったらしいよ」みたいに話題になるくらいには顔見知りで、その後みんなでそのパイプを直す。

もし、これが都市部で起きたら、クレームの嵐。「行政」による改修を待つだけ。システムに依存することを否定するわけではないですが、国家のシステムがダウンしつつある中で、「自治」の必要性を考え直すべきタイミングが来ていることは間違いありません。

 

このように、実際に起業するかは別として、「自ら選択して、自ら作っていく」起業家的なマインドシップが求められる時代になっているのだと捉えています。

 

社会全体を作れるタイミング

究極的には、あらゆる物は自然界によって作り出されています。言ってしまえば、人間は表面上で料理をしているだけです。国家もお金も共同体も、、、何もかも概念にすぎません。

『邂逅の森』は、自然と人が共に生きる古き日本の風土を描いた小説です。獣狩りをするマタギ主人公の物語からは、「生きることの生々しさ」を感じられます。数年に1度くらいのペースで読んでいるのですが、本来の人間とは何かを考えさせられる作品なのでオススメです。

 

僕たちが作り出すことができるのは、ビジネスだけではなく社会全体です。もっと言えば、この変化の中で社会を自ら作っていく必要があるタイミングだと考えています。これは、新たな社会を作りうるようなAIやブロックチェーンなどの技術が登場したり、香港の問題のように国家との付き合い方の再定義が起きたりしていることを見れば明白です。

ただ、これまでのシステムを否定する必要はないとも同時に考えています。あくまで、様々な価値観が共存できるようにしていく必要があるということです。インターネットの登場以降、人の輪は広がり続けてきました。これと同時に最近では、小さな共同体の重要性が注目されています。「分散」が起こり始めている時代の潮流を見て、僕はポスト資本主義社会の実現のためのフィールドとして「地方」に注目しています。

 

後編では、「地方」というフィールドを選んだ林篤志氏が、どのように事業と向き合っているのかについて、自身の哲学とともにお聞きする。

 

※インタビューをもとに作成
インタビュー・文章:高井涼史

Book List

『就職しないで生きるには』 レイモンド マンゴー (著) 晶文社

『邂逅の森』 熊谷 達也 (著) 文藝春秋

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