宮田昇始が語る SmartHRの原点とポールグレアムの言葉 “諦めないようにするだけで、驚くほど遠くへ行ける”

“とにかく外に出ろ。”

ーー本についてもお話を聞かせてください。あまりビジネス関連の本は読まれないとのことですが、これは参考になったと思う1冊があれば教えてください。

宮田:『Running Lean』は、ピボットを繰り返していた時期も、SmartHRの事業プランにたどり着いてからも、ヒアリングの手法などでとても参考になりました。スタートアップにおいて欠かせない、課題やプロダクトの検証手法などが実践的に書かれています。

この本に出会うまでは、「10回挑戦をすれば1回くらいは当たるだろう」というマインドでした。でも、1案を検証するのに1年かかるとすれば、それだけで10年もかかってしまう。その結果が出るまでに耐え切れるのかというと、おそらく難しいですよね。

 Running Lean』は、できるだけ早いスパンで失敗を積み重ねてしまう、そのスパンが短ければ短いほど、良い事業プランに出会えるというものです。 

とにかく外に出ろ」と。ヒアリングは、自分たちのアイデアが否定される可能性もあるので、怖い行為でもあります。ついつい、ヒアリングに行かない言い訳を考えてしまうんですが、その言い訳をすべて潰すように書かれていましたね(笑)。

 

徹底的な課題・ソリューション検証

ーーSmartHRの着想の前にもヒアリングには行かれていたのですか。

宮田:はい、ピボットを繰り返していた時にはたくさんヒアリングに行きました。本に書かれていたことをそのままやったわけではないですが、ファクトを聞き出す方法などのエッセンスを得たイメージです。

1週間に1案を検証する繰り返しでした。土曜・日曜・月曜で、リサーチなどから課題などの仮説を組み立てる。そして、火曜・水曜でヒアリングできそうな人にアポを取り、動くモックを作ってみる。そして、木曜・金曜で課題の検証を中心にヒアリングし、金曜の夜にチームで議論をする。このループをひたすら行っていました。

今でも、SmartHRの案でヒアリングにいった時のことは覚えています。SmartHRは人事労務に関するサービスなので、ヒアリング内容は「入社手続きは誰がやっていますか?」「役所に行く担当者は決まっていますか?」「役所に行って帰るまでの時間はどのくらいですか?」などでした。 

すると、質問に答えるだけでなく、聞いてもいないのに、役所に関する不満や会社の書類関連での手続きに関する不満を、どんどんと話してくれたのです。この時、ここには課題があると明確に判断できました。

 

また、SmartHRの事業プランが決まった後も、ヒアリングは活用しました。すぐにランディングページを新設し、事前登録フォームを作って、Facebook広告を2万円分くらい動かしてみると約150件もの応募が集まりました。

「実は、まだ具体的なことは決まっていなくて…。お話を聞かせてもらっても良いですか?」という旨のメールを送ると、約4割の方から返信をいただきヒアリングしました。具体的にどんなポイントが課題なのか、作っていくべき機能などについてスコープを絞ることができます。 

ヒアリングをしても新たな気付きがなくなってきたら、開発に戻る。開発する項目がわからなくなってきたら、ヒアリングに行く。この繰り返しですね。

 

100の問題を、100人で1問ずつ解いていく経営

ーー最後に、これからの挑戦について聞かせてください。

宮田:組織を大きくしていく上でこれからも大事にしていくのは、「100の問題を、100人で1問ずつ解いていく経営」です。 

採用、ファイナンス、サービスグロース、人事評価制度等々。それら全てを社長1人でやっても時間がかかってしまう。でも、専門家が100人集まって取り組んでいけばトライアンドエラーも速度が上がるし、とても良いですよね。

そして、コロナウイルスの影響で、世の中は大きな変化の時を迎えています。SmartHRでも、フルリモートワークを実施しています。すると、新入社員が馴染みにくい、といったこの状況下ならではの課題も出てきます。

こういった、一見すると小さな課題についても真摯に向き合い、課題が小さいうちに潰していく。そして、SmartHRをこれからの時代で、他の企業の模範とも思ってもらえるような組織にしていきたいと考えています。

 

ーーーーーーーーーー

リモートワーク期間に入って、宮田さんは本格カレー作りを楽しんでおり、『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分!本格インドカレー』をオススメしていただきました。 

“本格カレーと聞くと、一からスパイスを揃えたり大変そうですよね。でも、ベースを作ってそれを少し工夫するだけでいろんな種類のカレーが作れるんですよ。一番ハマっていた時は1日3食カレーだったこともあるくらいです(笑)。”

会社のSlackの個人チャンネルにも、作ったカレーの写真を載せているとのこと。娯楽を押し付けるわけではないものの、気軽にコミュニケーションできる環境もSmartHR社の良い組織の文化かもしれません。

ーーーーーーーーーー

 

Book List

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES) アッシュ・マウリャ (著) オライリージャパン

南インド料理店総料理長が教える だいたい15分!本格インドカレー』 稲田 俊輔  (著) 柴田書店

最新情報をチェックしよう!