スマートニュース執行役員 佐々木大輔が語る「仕事に活きる物語」とは “誰もが当たり前に情報発信できる時代に”

「誰でも書ける」を体現した

伝承や物語に興味をもって読書しているなかでも、オーストラリアのアボリジニの研究をした保苅実の『ラディカル・オーラル・ヒストリー』と、世界中の神話の型を研究したジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』には特に刺激を受けましたね。

 

そうするうちに、自分でも自然と、語り出すように小説を書き始めました。きっかけは、自分が企画や運営を担当していたブログサービスを使って何気なく書き始めたことで、それが気づいたら長編小説になっていました。2018年に刊行した『僕らのネクロマンシー』は、そうした書き方で作った現時点の最新作です。

UGCに関わるサービスをつくってきて、「誰でも情報の発信者になれますよ」というメッセージを発信してきました。

それが今では当たり前の、わざわざ言うほどでもない陳腐なメッセージになってしまったんですが、何気ない投稿が長編小説にまでなってしまうことを証明できたのは個人的にはよかったのかなと思っています。

佐々木喜善の東北なまりの怪談が、柳田國男によって100年後にも残る一冊の本になるなんて誰も思わなかったでしょうが、誰かの何気ない語りにはそれだけの可能性があります。

 

ちなみに私が書いたこの『僕らのネクロマンシー』は、『遠野物語』をオマージュした装幀を細部までこだわって作り「第53回造本装幀コンクール」で文部科学大臣賞を受賞、「世界で最も美しい本コンクール 2020(Best Book Design from all over the World 2020)」で銅賞(Bronze Medal)をいただきました。

numabooksの販売サイトか、遠野市にある「NōTO GENERAL STORE」で購入できますので、ぜひご覧ください。

 

読書で “シンボル操作”を充実

読書が仕事に活きるのは、 “シンボル操作”をするときです。シンボル操作というのは主に社会学の用語で、多義的に理解されているような言語や物をシンボルとして扱って、特定の意味やメッセージをつくったり、それを読み取ったりすることをいいます。

ドキュメントを書いたり、プレゼン資料を作るときはもちろん、短い時間で人に何かを伝えたり、会議の内容を要約したりと、私たちは日常からあらゆる場面で “シンボル操作”をしています。

だったらそれをより良くできたほうがしい、表現の幅は広いほうがいいですよね。そのために、ものを「読む」ことが近道になると思います。

“シンボル操作”は映画でも絵画でも行われていますが、それを「見る」だけではだめで、映画を読んで、絵画を読んで、そうしたはじめて身につくものです。でも、読むといえば、もっとも身近なのは本ですよね。本は最初から、見るものではなく読むものですから。

 

小学生の頃の読書は娯楽のためのものでしたが、振り返ってみると、読書によって仕事で起こった危機から救われたり、仕事をよりよく行うための知識や技術が身についたり、読書によって人生が統合されている感じがします。

読書をしてなかったら、自分はもっとバラバラになっていかもしれませんね。誰もが情報の発信者になれる時代だからこそ、それをよりよく行うために、読書は自分を鍛える優れた方法だと思います。

 

※インタビューをもとに作成
インタビュー・文章:高井涼史

Book List

影との戦い―ゲド戦記〈1〉』 アーシュラ・K. ル=グウィン (著) 岩波書店

走ることについて語るときに僕の語ること』 村上 春樹 (著) 文藝春秋

遠野物語・山の人生』 柳田 国男 (著) 岩波書店

定本 物語消費論』 大塚 英志 (著) 角川書店

ラディカル・オーラル・ヒストリー――オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践』 保苅 実 (著) 岩波書店

千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上』 ジョーゼフ・キャンベル (著) 早川書房

僕らのネクロマンシー』 佐々木大輔 (著) NUMABOOKS

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