”歴史を学び、革命を先導しろ”『鈴木寛』が語る必読書10冊 -前編-

決断をするには哲学が必要

熟議の際にもそうですが、決断をするポジションについている人は、ぜひ公共哲学の考え方を体得してほしいです。ハンナ・アーレントの『全体主義の起源』と『エルサレムのアイヒマンー悪の陳腐さについての報告』は、現在に通じる部分があり、不朽の名作だと思います。ブラック企業・ブラック労働の危険性を、21世紀最大の大虐殺をしたアイヒマンから学べます。

また、一時的にブームとなった、マイケル・サンデル教授の『これから「正義」の話をしよう』は、正義に対する考え方を鍛える上で、これからも読み継がれていくべきだと思います。

最近の世間の関心事からいくと、民主主義の母国ともいえるイギリスがブレグジットの論争で大揉めしていたり、アメリカではトランプのような大統領が生まれています。僕は、世論という存在が、強い影響力を持つようになっており、歴史は繰り返すことを感じます。このような情勢では、ユルゲン・ハーバマスの『公共性の構造転換』、ウォルター・リップマンの『世論』を読むべきだと思います。

重要な決断が、正義や熟議などとかけ離れたところで、自由に行われてしまっています。この問題をハーバマスは50年前に、リップマンは100年前に指摘しているのに、今でも解決していないということを知っていただきたいです。正義なき決断や熟議なき決断は良い結果になりえません。

僕は妥当な結論は中道にあると考えています。特に政治的な決断については慎重である必要があるし、実際の現場レベルではプロセスを慎重に積み上げて議論がなされています。そして、ジャーナリズムは正しい情報を世の中に広げることによって、世の中の判断をより全うなものにしなければなりません。ですが、残念ながら売上至上主義となってしまった商業メディアは過激な情報のみを発信する状態になっています。それに影響を受けた大衆、そしてそれに合わせる政治家、と悪循環に入っていってしまいます。インターネットの登場以後、さらに問題は深刻化してしまっているのも事実です。

後編では、この状況を今後どのように打開していくのか、そのために必要なこととしての読書、をビジネスに絡めつつさらに深掘りしていく。

 

※インタビューをもとに作成
インタビュー:青木郷師、文章:高井涼史

Book List

熟議のススメ』   鈴木 寛/著 講談社

全体主義の起原 3――全体主義 【新版】』   ハンナ・アーレント/著 みすず書房

エルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告【新版】』   ハンナ・アーレント/著 みすず書房

これからの「正義」の話をしよう』   マイケル サンデル/著 早川書房

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究』   ユルゲン ハーバーマス/著 未来社

世論〈上〉』   W.リップマン/著 岩波文庫

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