ベンチャーキャピタリスト『和田圭祐』が選ぶ3冊。“読書は自分の考え方の土壌になって長く反芻されるもの”

大きなことを成し遂げたいことにオススメの本

ベンチャーキャピタリストとして起業家と大きなことを成し遂げたいと思う時に、真っ先に思い起こす本は司馬遼太郎の『世に棲む日々』です。この本は、明治維新の転換を吉田松陰と高杉新作という二世代の活躍を通して描いた歴史小説です。

吉田松陰のような第一世代の思想家は、早くに刑罰にあったり、酷い死に方をしています。実際に吉田松陰も非業の死を遂げています。そして、それらに続く高杉晋作のような第二世代の革命家は、新しいものを提示し率先して激しい行動を起こす人が多いのですが、この世代もまた戦死したり、早く力尽きる運命を背負っている人が大半です。二つの世代が時代に求められる役割と、それらが繋がる系譜がとても印象深く大好きです。既存の価値観や社会体制が崩れて、新しい社会に転換される過程というのは、ある瞬間を境に単純な線形で全てが変わるわけではなく、多くの事象が複雑に混沌と干渉しあって螺旋階段を上がっていっているような印象です。

起業家にとっての現実にも通じるところがあると思っていて、起業の道中は良い時も悪い時もありますが、良いニュースの方がメディアに露出されやすく、線で繋げると外からは一見、綺麗に線形で成長しているように見えます。でも実際の経営や事業の現場は決して美談だけではありません。もちろん僕らは焼き討ちしたり、幕府を倒したりはしませんから、実務に直接活かせるという読み方はできませんが、時代の転換点の、裏側の苦悩を想像したり、自分の中の思考の材料に加える意味で、この作品は面白いです。彼らと比べることで、自分たちの挑戦や苦悩もまだまだ小さいことと思えるし、そうやって自らを鼓舞しています。

 

大きな規模になったものの黎明期を知ってみたい人のための本

同じような観点になるかもしれませんが、北康利の『銀行王 安田善次郎』も、現在誰もが名前を知っている企業グループの源流となる創業者の物語や社会背景をイメージする教材として愛読しています。

みずほ銀行や明治安田生命などの金融業界を代表する企業群の出発点はなかなか想像し難いかもしれませんが、そこには苦労を倹約精神で乗り越える一人の創業者の物語があり、社会の流れに合わせて大胆な挑戦をしていく姿勢は、志を再確認させてくれます。

今の企業活動からは想像がつかない、誰か始めた人がいて、どんな時代にどんな始まりをしていたのか、安田善次郎の生涯を描いたこの作品で追体験することができます。

 

僕にとっての最高の指南書

僕にとっての最高の啓発書はレイ・ダリオの『PRINCIPLES』です。これは、ブリッジウオーターという大きな運用会社を経営してる金融業界の最前線の経営者が考え方の原理原則を整理した本です。世界トップクラスの運用会社の背景となっている経営思想であると同時に、彼自身の物事の向き合い方とか自分の律し方とか仲間に求めたいことを書き記しています。題名は自己啓発っぽいですがそれを超えて、経営論や組織論に適用可能な普遍性の高い金言が凝縮されています。明確な筋が通っていて、とても良書です。啓発書というよりは投資会社経営の指南書というべきかもしれません。

例えば、本書の中で「投資の聖杯」という概念を発見するくだりがありますが、自分たちの発見を理論化して再現性を高め発展させていく姿勢や、経験から何らかの機会や課題のヒントを発見して進化させるメカニズムに洞察と執念の深さを感じます。一つのアイデアを出発点として、そのモデル自体がどこまで完璧なのかよりも、発見して改善して実証しながら自分たちを進化させていく一連のプロセスと姿勢に感銘を受けます。自分たちの思考過程やコミュニケーションスタイルを厳密に定義して、それらの相互作用や体系を作るのを高い完成度で仕上げています。

ちなみに、レイ・ダリオの経済概論を学びたいなら、この本とは別に、経済がどんなメカニズムで回っているかを30分で解説した人気動画がYoutubeに公開されています。これもとても学びになるのでオススメです(笑)。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=NRUiD94aBwI

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